ソウルの喧騒を抜け、一歩足を踏み入れると、そこにはまるで時間がゆっくりと流れるような別世界が広がっています。仁寺洞(インサドン)の街並みはどこか懐かしく、訪れる人々の心を穏やかに包み込んでくれる温かさがあります。

石畳の道を歩くと、韓国伝統の木造家屋「韓屋(ハノク)」が軒を連ね、その前には韓紙(ハンジ)や書道用品を扱う店が静かに佇んでいます。古くから続く文房具店には、手作りの筆や硯が並び、まるで昔の詩人や学者たちの息遣いが聞こえてくるようです。

どこからともなく漂ってくるのは、屋台で焼かれるホットクの甘い香ばしさや、韓国伝統茶の深く優しい香りです。細い路地に入ると、小さな画廊や骨董品店が点在し、時代を超えて受け継がれてきた陶磁器や書画が静かに展示されています。それぞれの品物には長い歴史が刻まれており、ただ眺めているだけでも、過ぎ去った時代の物語に触れることができます。

昼下がりには、伝統茶屋で一息つくのもおすすめです。琥珀色の韓国伝統茶を口に含むと、ほのかに甘く、どこか懐かしい味が広がります。窓の外を眺めると、ゆっくりと歩く老夫婦の姿が見えます。手をつなぎながら語り合う二人の姿には、仁寺洞の街が持つ優しさと温もりが感じられます。

仁寺洞には古銭ショップも数多く見受けられ、私も何度か覗いてみた事があります。何とそこでは、日本の古い紙幣を束で売ってる事もあります。もちろんバラでも売ってくれますが、ほとんどが新札の状態。何故ここで販売しているの?と思ってしまいますが、戦前からの面影が残っているのかも知れませんね。

仁寺洞は、ただの観光地ではありません。韓国の古き良き時代の面影を今に伝え、訪れる人々に穏やかな時間を届けてくれる場所です。これからも変わることなく、懐かしさと美しさをそっと守り続けていくことでしょう。

関連記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事
TOP